梅雨になると、空気が重くなる。
兵庫の北は湿気が多くて、この時期は窓を開けても開けなくても、どこかじっとりとした感じがある。以前の私なら、この湿気が大嫌いだった。頭痛がひどくて、天気予報よりも自分の頭のほうが正確に低気圧を知らせていた。
でも今は、不思議とそこまで悪くない。
溺れそうだった、あの頃
都市部で働いていた頃の話をすると、夫は今でも少し眉をひそめる。それだけ、しんどそうに見えていたらしい。
朝から晩まで、誰かに気を使って、誰かのペースに合わせて。仕事だからそれは当たり前だと思っていたけれど、家に帰っても頭の中は仕事のことでいっぱいで、子どもたちの顔をちゃんと見られていなかった気がする。
「このままでいいのかな」と思い始めたとき、夫が言った。「場所を変えてみようか」と。
旅先で出会った景色が、ずっと頭にあった
ここには、子供を授かる前に、夫と2人で一度だけ旅行で来たことがあった。
そのときの印象が、ずっと頭の隅に残っていた。山の緑が深くて、空気が違って、すれ違う人がなんとなく穏やかで。「こういう場所に住んでいる人は、どんな毎日を送っているんだろう」と思いながら帰ったことを覚えている。
だから夫の一言に、すぐ「ここがいい」と答えた。
来てみて、わかったこと
住んでみると、想像通りの部分と、想像以上の部分があった。
時間がゆっくり流れている、というのは想像通りだった。忙しい日だってある。子どもの送り迎えも、仕事も、家のことも、やることは都市部にいた頃と大して変わらない。でも、なぜか心が穏やかでいられる。
近所の人がよく声をかけてくれる。子どもたちが外で遊んでいると、近くのおじいさんが「元気やなあ」と笑いかけてくれる。それだけのことが、思っていた以上に心に響く。
子育てのしやすさも、都市部とは全然違う。前は近くで子供と遊ぶのは公園しかなくて、今は自然の中で子どもたちが思い切り走れる。それを隣で見ながら、「ああ、これでよかった」と思う瞬間が何度もあった。
夫に、ありがとう
引っ越しを提案してくれたのは夫だけど、実際に仕事の環境を整えてくれたのも、子どもたちの転園の手続きをほとんどやってくれたのも、夫だった。
「ありがとう」をちゃんと言葉にしたことが、あまりなかったかもしれない。ここに書いておく。
梅雨の湿気も、悪くない
あの頃の頭痛が、今は少し和らいでいる。湿気は変わらずあるのに。
たぶん、体じゃなくて心の問題だったんだと思う。
雨の日の庭を眺めながら、コーヒーを飲む朝。それだけで、今日も悪くないと思える。そういう毎日が、ここにはある。

コメントを残す